サルハン農場の女主人のイブラヒムとの思い出 オスマン帝国外伝シーズン3 43話ハイライト

外では雪が降ったようだ。そこへ

「ムスタファ皇子のおな~り~」

と言う声と共にムスタファの姿が現れる。

後ろに控えるのはヤフヤーだ。ミフリマーフが彼を現在慕っている。

ムスタファが訪れたのはサルハン農場だった。

主人が

「いらっしゃるのを存じ上げておりましたらお迎えの準備をいたしまのに」

というと。、

「構わんでくれ。おくさまはげんきかい 」

ときく。

「あまり動けませんがげんきです、おかげさまで」

と答えた。

「おあいしたいのだが 」

「どうぞ皇子様 」

と勧められてムスタファは中に入る。とそこには年老いた上品のいい女性が座っていた 。

「私はスレイマン皇帝の息子ムスタファと申します 」

と笑顔で礼儀正しく自己紹介をした。

「皇子様」

と言うと嬉しそうに微笑む老婆。

それから「もうしあけありません 」

とたちあがろうとすると、

「おらくになさってください」

といいながら、気を使って立たないようにさせるムスタファ。

「狩りの途中近くを通りかかったもので、いかがお過ごしかと思いおよりしました 」

「ありがとうございます。皇子様」

そしてやさしくムスタファは

「ご機嫌いかがですか。おげんきでいらしゃいますよね」

ときくと

「おかげさまで、ご覧のようにげんきです。年寄りはいつも変わりませんわ 」

と答えた。

「長い間が過ぎてしまいました。ここへイブラヒムパシャが連れてきてくれました。
私は当時とても小さかったのですがよく覚えています」

と最後にその老婆とあった時のことを話し始めた。

「イブラヒムパシャはお元気ですか、元気でいらっしゃいますよね、インシャアラー」

と彼女は言った。

するとムスタファは首を縦にふって

「政務でお忙しいです。私たちもあまりあうことができません。
ですが彼はげんきですよ。彼は家族と共に幸せに暮らしています」

そういうと老婆はなつかしそうに

「イブラヒム」

とつぶやいた。 そして

「彼がここへ来た日を昨日のことのように思い出しますわ。
昨日来たあの小さな子が偉大なオスマン帝国の大宰相になるなんてことを
だれがそうぞうできたとおもいます? 」

と微笑んだ。それから

「本当に上手にヴァイオリンを弾いていましたわ。その後、彼のような子は誰もこの農場には来ませんでしたわ」

ムスタファも笑みを浮かべ、

「私も彼のヴァイオリンを聞きながら育ちました」

と答えた。 そこへ家の者が船をもって来た。 それを女主人はみながら

「イブラヒムがつくったのですよ。いつかこの船で母のそばに行くんだと言いながら・・・
私も一緒に連れて行くんだといいながら・・・
彼はいつも故郷を恋しがっていましたわ」

と言った。

「イブラヒムパシャは一度パルガに戻ったことがありました。ですが、不幸にも母家は亡くなっていらっしゃり、彼女に会うことができませんでした」

とムスタファが話した。すると年老いた女主人は次のようにお願いした。

「皇子様、私はこれを長い間持ち続けていました。彼のお会いしたときこれを渡していただければ大変うれしく存じます」
「はい」とムスタファは言って船を受け取った。

それから年老いた女主人は

「神があなた方に長寿をおあたえくださいますように」

と祈りの言葉を言うとムスタファは

「あーみん」

と答えながら、船をいとおしそうに見つめた。

宮殿に戻ったムスタファに心配そうにマヒデブランがどこにいたのかと聞く
ムスタファはサルハン農場の主人に会ったことを話した。そして小舟を見せた。
マヒデブランは

「彼女はイブラヒムパシャを実の子供の用に愛していたわ。パシャはこれを見たら必ず喜びますわ」

言った。


マニサではこのように今これからイブラヒムパシャに怒ろうとしている重大事件を全く知らなかったのだった。

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