【マヒデブラン】の半生 オスマン帝国外伝登場人物

マヒデブラン（マヒデヴラン）スルタン

本名はマヒデヴラン　ギュルバハル　スルタン。生年月日は正確ではないが１４９８年生まれ１５８０年２月３日死亡したという説がある。

１５１５年マニサで息子ムスタファが生まれる。 孫メフメット。

１５２０年スレイマンが皇帝になったとき、イスタンブルに移動する。

彼女は働いている女奴隷たちやアーたちにも愛されていた。母后にとってはお気に入りの嫁だった。
だがマヒデブランがイスタンブルに来た時生涯のライバルヒュッレムもハレムで働いていた。 マニサでは幸せな生活をスレイマンと送っていたのだが、ヒュッレムがスレイマンの心を彼女は勝ち取ると、彼女への嫉妬が強まった。
さらにヒュッレムの挑戦的な態度に我慢できなくなったマヒデブランはヒュッレムを叩きのめしてしまう。だがそのことがスレイマンの心をさらに彼女から遠ざける。

窮地に陥っても何度となく復活するヒュッレムに恐れをなしたマヒデブランはついに最後の手段に出る。食事に毒を盛らせ、ヒュッレムを毒殺しようとしするが失敗に終わる。
その時一緒に食事を取っていたスレイマンに害が及んだかかもしれないと知ったスレイマンは完全にマヒデブランを遠ざけるようになる。

それからというものマヒデブランの人生は愛のないさびしい暗い影に覆われていった。スレイマンがマヒデブランを女性として見ることはそれ以後なかった。
「常にムスタファの母としてしっかりと行動せよ」とスレイマンだけでなく母后にも忠告されるようになる。

それでも母后とイブラヒムはマヒデブランの味方だった。そしてマヒデブランの悪行をいつもかばうのはイブラヒムだった。
ハティジェも最初のころはヒュッレムに中立の立場をとっていたが次第にヒュッレムから離れていき、ニギャール問題で完璧にヒュッレムの最大の敵へと変貌していった。そのためハティジェもマヒデブランをいつも後押しした。

こうしてマヒデブランはみんなに守られていたが、ある時ムスタファの前で泣き顔を見せてしまう。母親が大好きで不憫にもおもう優しく勇敢なムスタファは小さいながらも母マヒデブランを守ると宣伝し、エディルネに移動する。

数年後エディルネから戻ったマヒデブランは立派に成長したムスタファを頼りに再びヒュッレムに立ち向かおうとするが、彼女には以前のようなパワーがなかった。

マヒデブランがしばらくハレムを離れていた間に母后とヒュッレムのあいだは険悪になっていった。マヒデブランが戻るころには母后が先頭に立ちヒュッレムを何とか追い出そうと必死だった。マヒデブランは母后のサポーターとしての位置に落ち着く

母后がマヒデブランに指示し、そして彼女の部下たちがヒュッレムを死に追いやろうとした。女奴隷たちを挑発して反乱を起こさせヒュッレムを襲わせたのだ。ヒュッレムは助かったが、マヒデブランの部下はしばらく追放される。

その間もムスタファのことで心を痛める。とはいってもその原因を作るのはたいていマヒデブラン自身だった。成長したムスタファの前で以前のように泣いてしまう。それをムスタファはスレイマンに抗議し、そのため父子の間がぎくしゃくしてしまったのだ。後悔するが大ごとになる。こんな失敗を何度か繰り返しながらも、ヒュッレム打倒を目指し日々奮闘するが、母后が亡くなる。

スレイマンはヒュッレムではなくマヒデブランを母后の後任、ハレムのトップの座につけた。思えば彼女が人生の中で一番華やかだった時代ではなかっただろうか ・・・

彼女はとうとう夢をかなえたのだ。だが彼女は弱みがあった。それは浪費癖だった。彼女は豪華で派手な生活をおくっていたためお金が足りなくなり、金貸しに借金をしてしまっていた。それをヒュッレムに気づかれマヒデブランはトップの座から引きずり落とされ、ムスタファがマニサへ知事として赴任するときについていった。

しばらくイスタンブルを離れることになる。マヒデブランがイスタンブルに来ることは、冠婚葬祭、戦時の留守役のムスタファに同行するという以外にはあまりなかった。それからはマニサでムスタファの安否を気遣い、ムスタファの成功のためにだけ生きる生活をするようになる。

だが成長したムスタファは母親の言うことをすべては聞かなかった。まずはヘレナ問題、ガブリエラ問題などに頭をいためた。さらにヒュッレムの間者によるムスタファの暗殺未遂事件など数えればきりがない。

そうそうファトマもスレイマンと言う息子をうんだが、子が病死し悲しみにくれたファトマは気がくるってしまう。
マヒデブランはそのファトマの対処も考えなければならなかった。

だが一番彼女が怖れたのは行き過ぎと思えるほど公正なムスタファの行動だった。正しいことを常にしようとするムスタファはしばしばスレイマンの意に反すると思うような行動をとることになる。
そのたびにムスタファの命を心配し、生きた心地のしない日々を送った。ついにマヒデブランの危惧していたことが起こってしまう。

ムスタファが敵の大使と会ったということにスレイマンは激怒し、マニサ知事からアマスィヤへムスタファが左遷される。こては時期皇帝の座を取り上げたという意味だ。

マヒデブランはムスタファと共にアマスィヤに向かう。だがアマスィヤではムスタファはふさぎ込んでしまう。マヒデブランはアマスィヤでは多くの寄付など善行を行いその地域の人々には慕われていた。

マヒデブランはアマスィヤでもムスタファのことを案じながら生活を続ける。そこでもフズルの娘ミフリュニーサと恋に落ちたムスタファに頭を悩まされる。ムスタファは反対を押し切ってミフュニーサを隠れ妻とし結婚してしまう。そして孫のメフメットが生まれる。このことがスレイマンに知られまた大変なことになるが、どんどん追い詰められていくムスタファをそれでも陰になり日向になりマヒデブランは支える。

ある時は悪事に手を染めるのもいとわない。そうなのだ、ヒュッレムの長男のメフメットを暗殺しようと間者をはなっていた。何度か試みた結果ついにメフメットは患者の罠によって殺される。マヒデブランは勿論このことをムスタファには内緒にした。ムスタファは公正で弟思いだったからだ。

そしてとうとうムスタファの最後がやって来る。いつも何かおかしいとマヒデブランは気付くのだが、決定的な気づきはなくミフリマーフに花押を盗まれてしまう。その花押が押されたムスタファの偽の手紙がムスタファを死に追いやる。

ムスタファはサファヴィー朝と戦いに向かっていたスレイマンにコンヤへ呼び出され絞殺される。

唯一の希望だった息子ムスタファが殺され其の後のマヒデブランの人生は想像がつくことだろう。
だが実際はより悲惨な運命が待ち受けていた。ムスタファの死の連絡を受けたマヒデブランは思わず自殺しようとするが、孫や嫁のために思い止まる。

そしてブルサへ行くよう命じられマヒデブランたちはアマスィヤの民衆に惜しまれながら旅立った。だがその道中悲劇が起こる。

２台の馬車で向かったのだが、マヒデブランの乗った後方の馬車が止まる。何か不具合が起きたとのことだった。

だが前を走っていた馬車はどんどん先へ進んでいく。呼び止めるマヒデブランたち。だが馬車は止まることなく姿を消した。中には幼いムスタファの息子メフメットが乗っていた。 

幼いメフメットは復讐を恐れたスレイマンの命によってその短い生涯を閉じた。
事の次第を理解したマヒデブランとミフリュニーサは不幸のどん底でマニサの生活を始めることになる。

しばらくしてイスタンブルに呼ばれたマヒデブランとミフリュニーサ。今度はミフリュニーサがヒュッレムの目に立ちふさがり小刀を持ち出す。ヒュッレムを殺すのかと思いきやミフリュニーサはその剣で自分の喉をかっ切った。マヒデブランの目の前でだった。
こうしてマヒデブランは息子、孫、嫁を亡くし一人ぼっちになってしまうのだった。

マニサに戻ったマヒデブランは困窮しながらもムスタファのためにジャーミを建てようと努力する。そして毎日ムスタファのために祈っていた。

ある時マヒデブランはカラアフメットの代わりに金銭を敵に融通したと疑われ、一切の支給が止められてしまう。それからと言ういうもの働く者たちが一人二人とへっていった。

その窮状を知った当時クタハヤの知事だったアラスブルトイーネムリさん（Aras Bulut　İyinemli)が演じたバヤズィットが、金銭を贈るがマヒデブランは受け取らなかった。

最後に彼女のそばに残ったのは（５０話でハレムに戻ってきた）フィダンとアトマジャが連れてきたユースフだけだった。

そしてとうとうムスタファのジャーミが完成する。それからはジャーミと自宅を行き来するのが日課となった。時がこうして厳しくも緩やかに過ぎる。

ある時突然ヒュッレムが尋ねてくる。もう何年も会うことのなかった宿敵を静かに簡素な家に迎える。
ヒュッレムは不治の病にかかっており、もうすぐ死ぬ。そのヒュッレムが許しを乞いに来たのだった。

ところでトルコではヘラルラシュマックと言う、別れる時にお互いに罪を許すといいあう習慣がある。
ヒュッレムが心からマヒデブランに謝ると、何とマヒデブランはその謝罪を受け入れたのだった。

マヒデブランに何が起こったのだろう？

たぶん彼女は息子を亡くして以来、この世中心の生活から身を退いたのだ。
浪費癖があったあのマヒデブランが、豪華な生活を送っていた彼女が、それとは正反対の生活を長年続けていた。

質素ながらもムスタファのために祈る生活だった。彼女の手には常にムスタファとマヒデブランが信じていた聖典クルアーンがあり、それをムスタファのために読んでいる時だけが彼女には救いの時間となった。マヒデブランは以前のマヒデブランではなくなっていたのだ。

ムスタファとマヒデブランの眠るお墓＠ブルサ

彼女はヒュッレムを許し、そしてヒュッレムにも赦され、二人はヘラルラシュマをする。
以後ムスタファのあの世での幸せを願って生き続けた。彼女はヒュッレムよりもスレイマンよりも長生きしたそうだ。

史実によるとスレイマンの死後セリムが皇帝の座に就きセリム２世となった。そのセリムはマヒデブランに公金を支給し彼女の生活の支えとなったそうだ。