【息子メフメトの死を悲しむスレイマン 】【92話から】オスマン帝国外伝シーズン③(エピソード103ハイライトシーン )

馬車に乗っているのは3人ミフリマーフとファーリエとスンビュルだった。

「勝利したが笑うことはできない。暗闇の中で真実が見えなくなってしまった」と、スレイマンは悲しみの中で真実は何かと自分自身に問いかける。「真実は唯一の神だ」と続ける。「心が苦しいのになぜ体が大地と一体にならないのだろうか」と続けるスレイマン。
それから
テントから出てくるスレイマンに兵士たちは頭を下げ胸をたたき哀悼の意を表していた。

宮殿ではみんながヤースィン章をききながら悲しみにくれていた。ここにはメフメト皇子の死を喜ぶ者はいなかった。(だが喜ぶものはアマスヤにいた)

またスレイマンの声が聞こえる。
「おまえは燃えなかったのか、神の愛に燃え尽きなかったのか。燃えて灰にならなかったのか?(聖メヴラーナによると人は神への愛に身を焦がし、燃えに燃え燃え尽きそして灰になるという。これは人が神の愛のみを全身全霊で受け入れたときに起こる状態で、その状態は神との合一ともいわれる。人が円熟した完成した状態をさす)
([Hamdım, piştim, yandım]メヴラーナの有名な言葉)

スレイマンは部屋に戻る。

そこへルトフィの後に大宰相についたスレイマンが入ってきて、メフメット様のご遺体をどこへ埋葬いたしましょうか」と尋ねる。すると
「ここへ連れこい私のライオンを・・。帝都へ連れてくるのだ」と言う。

ミフリマーフはやってきてスレイマンに会おうとするが誰とも会いたくないというとミフリマーフは悲しそうな顔をする。

スレイマンの再びナレートが続く。

「夜の暗闇はお前の闇の光だ。スレイマンよ。月の光はお前の愛する者たちと会うための光だ・・・」

スレイマンはこういいながらメフメトのことを思い出していた。生まれたときのこと、幼いときのこと、そして青年の立派になったメフメトを・・・
 するとメフメトがお辞儀をしそして消えていく。風でカーテンが揺れ、外には雷が鳴る。それを聞いてスレイマンは「天までもが私の心を知ってか、どうしたらよいかとまどっているようだ」という。そして神に問いかけ、「私も連れて行って」と懇願するスレイマン。
 彼はイブラヒムをなくし、ハティジェをなくし、ヒュッレムをなくし、そしてメフメトをなくして生きる気力もなかった。それで神に助けを求める。皇帝であり強力な権力を持ちこの世を支配したかのように感じてきたが、実はそうでないことを知らしめられる。

死を止めることができない非力で、無力でちっぽけな存在だと知らされたスレイマンは、神に救いを求め祈るほかなかった。

息子を失った親の気持ちをいやすことのできるものは何もない。ただただ時が過ぎるのを痛みと共にまつ以外に方法がないのだ。
スレイマンも全くそんなきもちだっただろう。
雷の響く音がスレイマンの心の痛みと共鳴し、より痛みを増しているかのようだった。だが雷の音は痛みを抱えるものにとって、その痛みを分かち合うことができるように感じられる安らぎの音でもあった。

こうして世界の覇者であるスレイマンも、この後痛みを抱えながら生きてい行くことになる。

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