【トルコ小説】「心の園にてメヴラーナ」その14 メヴラーナに影響を与えた方々
「メヴレヴィーについてお話した後、彼らのことも説明いたします」
「ありがとうございます。メヴレヴィーにおける情熱溢れる愛についてお話ししていましたね」
「メ ヴレヴィーによって理解される熱き愛とは、人間が人間に対して抱く無常の人間的愛ではありません。アッラーに対して感じる限りのない深い見返りのない絆が 必要とされる愛です。永遠に続く熱烈な燃える心です。メヴレヴィーの考え方、捉え方が、ネオプラトンの哲学の流れに影響を受け、さらにメヴラーナもまたメ ヴラーナの継承者たちの作品に見られるスーフィズムの概念を示す諸作品において、たとえばメヴラーナの『メスネヴィー』や『偉大は詩作集』、スルターン・ ヴェレドやウル・アーリフ・チェレビーの作品などに見られるスーフィズムの概念は、プラトン主義が発展したもの、つまりプラトンの哲学の流れを汲む哲学書 に多大な影響を受けているという見方があります。しかし、もし私にお尋ねるなら、『聖メヴラーナに影響を与え彼の心を満たしたものは、ただただ最後の預言 者ムハンマド・ムスタファー(彼に祝福と平安あれ)のスンナとアッラーへの情熱溢れる愛だけである』と答えるでしょう」
「私にとっては、聖メヴラーナがほかの誰からも影響を受けることのない独自の思想を持つ偉大な哲学者です」
「哲学者という言葉の代わりに、「神の親しき友(ワリー)」と呼ぶほうがよりふさわしいでしょう。よくお調べになり、理解なされば、自らこのように呼ぶようになられるでしょう。今のところは哲学者と言ってもよろしいかと思います」
「ワリーとは哲学者よりももっと優れていることですね、それが分かりました。ともかくこのことについての詳細は、後ほど学ぶことができますね。今説明の残っている部分をお続けください」
「イスラーム世界で宗教と音楽の狭き道を結びつけ、崇拝行為として音楽を位置づけた最初のタリ-カがメヴレヴィーといえます。葦笛、クドゥム、ヌスフィヤェ(短 い葦笛)レバプ(3弦の弦楽器)、さらに時代が下ってタンブルやさまざまなサズなどが付け加えられ、宗教的儀式として整えられ、ズィクルしながら、セマー の場に入り、イラーヒ(神をたたえる詩歌)をうたいながら、シャリーアに対して柔軟な姿勢を見せたのがメヴレヴィーです。このため、幾つかの点が論争の的 になっています。しかし、多くの国々の学識者や王たちが、メヴレヴィーとなり、修行場に通った事などにより、メヴレヴィーへの圧力は取り除かれる結果とな りました」
忠俊は、ある部分を完全には理解することができなかったが、それらのことがらについても、できる限り集中して聴いていた。ガイドの頭を混乱させないため に、静かに聴いていた。ガイドは、忠俊が日本人であることをすっかり忘れてしまっていた。ただ目の前には、メヴラーナについて知りたいとのぞむ信仰者の一 人がいるかのように、懸命に説明していた。忠俊が、どの部分で理解していないかも、頭の隅に書き込むことを忘れてはいなかった。後に、この部分について調 べようと思っていたからだ。