【書籍】 「バブルの物語」ジョン・K・カルブレイス著

これは1990年ごろ書かれた本です。ふつうは時がたつにつれてどこか古臭い感じを受けるもんなんですけど、この本は違いました。まるで今書かれたかのように感じさせる本です。それどころか時がたてばたつほど内容はより輝きを増していくように思います。
内容は簡単で繰り返されるバブルの原因は陶酔的熱病にかかる人々だというのです。
陶酔的熱病とか熱狂的陶酔感とかは聞きなれない言葉ですが、原語ではEUPHORIAです。「根拠のない過度の幸福感」とか「陶酔感」という意味で訳者の鈴木鉄太郎さんは解釈しています。

著者はいくつかバブルの様相を例を挙げて説明していますが一番面白かったのはチューリップの球根のお話でした。
時は1630年代、ちょうどマスケティアーズがフランスでは活躍していたころです。そのお隣さんおオランダでチューリップの球根が買われます。チューリップの球根がヨーロッパに入ったのは、スレイマン大帝の時代のイスタンブルからでした。1562年です。これはヒュッレムがなくなって4年目そしてバヤズィットが亡くなった次の年です。
スレイマンの晩年の時代オスマン帝国で皇位争いをしているとき、オランダではこのチューリップの球根で大変なことになっていました誰もかれもが全財産をはたいてまでもチューリップを勝ったのです。一時は球根1つが25000ドルから50000ドルもしたそうです。いドル110円で計算すると275万円から550万円もしたんですね。
わあなんという値段!
みんなが永遠に値段が上がり続けると思い込んで買い続けるので値段はどんどんあがってていきますが、ある時チューリプの球根がただの球根に過ぎないので、誰かが突然売り始めるときが来ます。もう値段が上がらないんじゃないかと思って周りの人々も買うのをやめます。一度売り始めると、今度はまわりのみんなは不安がってどんどん売り始めます。
というような具合になると、球根の値段が急に下がり、球根本来の価値の値段にまで下落は止まりません。なんせ球根ですから、
でもここで面白いのは球根の値段を上げたり下げたりしているのは陶酔的熱病にかかっている人々なんです。チューリップの話だけでなくいままでバルブがはじけるたびに、専門家やその筋の人々はいろいろな原因を見つけ出してくるのですが、
そのバブルにも共通している買う人の気持ちの変化には焦点を当てませんでした。
お金を儲けようとして、自分の持っている以上のお金をかりてチューリップを買う人自身に問題があるという指摘をしてこなかったそうです。

そこで著者は陶酔的熱病にかからないための方法を提示するためにこの本を書きました。
応えは高度な懐疑主義です。これがこの熱病にかからない予防法だそうです。
たとえば明白な楽観ムードはおろかさのあらわれであり、巨額な金を得たり利用したり管理したりしすることは知性とは無関係であると自分にしっかりいいきかせることができるなら、この病気にはかかりにくいとのことです。
もう少し簡単に言うと、興奮したムード、楽観ムードの市場には参入しないこと、お金を今巨額に得ている人がいてもそれは彼の知性とは無関係であることを肝に銘じるということではないかと思います。
隣の芝生は青く見える?ではなくて実際に隣の芝生が青くても、それが知に基づく青さでないならば絶対その芝生を得ようとしてはいけないということになりますでしょうか・・・

本からの抜粋は『』の中です。
『金融的熱狂の過ちが繰り返し起きるよう仕向ける事情は、その作用する仕方に関する限り、1636-1637年のチューリップ今日の時以来何ら変わっていない。個人も機関も、富の増大から得られる素晴らしい満足感のとりことなり、これには自分の洞察力が優れているからだという幻想がつきものなのであるが、この幻想は、自分および他の人の知性は金の所有と密接に歩調をそろえて進んでいるという一般的な受けとめかたによって守られている。
このようにして生じたこのような考え方から値をせり上げるという行動が生まれてくる。この競り上げの対象は、土地であれ、証券であれ、あるいは近年には美術品であるとか、さらにまたアメリカや日本で見られるようにゴルフ場開発であってもかまわない。個人的にも集団的にも懸命なことをしていると信じ込まれている事情は、価値上昇の動きによって確証される。このような上昇が続いた後、大きな幻滅と暴落の時がやってくる。この暴落は、穏やかに来ること決してはない。この暴落は必死になって何とか逃げだそうとする努力を伴うのが常であるが、そうした努力はていてい失敗する。・・』
『投機の崩壊にかかわっていた人は、自分がおろかであったとは決して思いたがらない。
先駆けした投機者の中でも特に目立った人もしくは極悪な人に何らかの罪を負わせることはできるけれども、後になって幻想につり込まれて投機に参入した人に対しては、そうはいかない。・・・』

著者は『後になって幻想につり込まれて投機に参入した人』に対して特に注意を払っています。彼らが実はバルブを起こす主な原因なのではないかと私たちに気づかせたいのでしょう。

『市場は本質的に完全なものである、というのだ。しかし、上昇が上昇を呼ぶ投機のエピソードが市場自体に内在していることは明らかである。上昇の頂点で暴落が起きることについても、同じことがいえる。ところがこのような考えは神学的に受け入れがたいものであるから、外部的な影響を見つけ出すことが必要となる。・・・
市場は内在的必然性を持った誤りという点に関しては無罪であると主張することができるわけである』

だが著者は外部的な影響を見出して並べ立てても、その点を無罪にすることはできない、それこそが今まで何度となく見過ごされ見逃されてきたバルブを起こす大きな一因だと繰りかえし述べています。



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