ものがたり「守り人たち」3~冬のアイスクリーム~

メヴラーナ博物館前
シャムの姉と明菜はコンヤを出て黒海沿岸を旅した。二週間後再びコンヤに戻り、メブラーナ博物館を訪れた。それはコンヤの中心部にある。車をアラウッディーン通りの駐車場にとめ、民芸店の並ぶ通りをのんびりと博物館を目指して歩いていった。メヴラーナ博物館の前には季節外れのアイスクリーム屋さんが、
「アイスクリームはいらんかね」と呼び掛ける。なぜ寒いのにアイスなんかうっているんだろう?でも明菜はアイスクリームが気になって、シャムスの姉が博物館に入っていったのに気がつかなかった彼女を見失った明菜はあわてて博物館の中へ入った。博物館はそれほど大きくはないのだが、明菜ははぐれてしまった。
明菜:「そうだ、ミネの弟のところへいってみよう。もしかしたら彼女に会えるかもしれない」と思いアイスクリームを美味しそうに食べている女の子に、片言のトルコ語で、
明菜:「ピリンチ オルタ オクル ネレデ?(ピリンチ校中等部はどこ)」と尋ねた。
女の子:「ビリミヨルム、アブラ(わからないよ、おねえちゃん)」
と女の子は答える。悲しそうな顔をした明菜に、
女の子:「これ、あげる」
と、持っていたアイスクリームをニコっと笑って渡し勢いよく走っていった。アイスクリームをよく見るとバニラアイスの天辺には、チョコ色と橙色と赤色のマーブルがのっていた。マーブルをよく見るとそれはターバン型をしている 。これは実はただのマーブルではない。「守り人たち」なのだ。
彼女は急にうれしくなってベンチに腰を下ろしアイスクリームを一口食べようとした。 次の瞬間、アイスクリームを口にくわえたままピリンチ校中等部の穀物倉庫の前にいた。守り人たちはピリンチ高に用事があったのだ。

ピリンチ高では、食べ物探しをしていた。シャムスは背後の物音に気づいて、鍵と格闘中の健から音のする方へ眼を移した。振り向くとそこに姉の友人の明菜が立っていた。
「わあ」

とびっくりしてとび下がった赤毛のシャムスは、物静かなシンハヤトにぶつかった。彼は倒れた。すると調理場の机の下にマカロニの袋がみえた。シンハヤトはマカロニの袋を必死で取り出した。表示をよく見てみるとマカロニは期限切れのものではなく食べられそうだった。 

しん:「おい、マカロニがあるぞ」

と叫んだ。

健:「えっ、どこどこ」

シャムスは明菜の顔を見つめていた。明菜もまた彼を見て驚き持っていたアイスを、マカロニの上に落としてしまった。明菜は何が起こったかよくわからなかったがシャムスの顔をみてほっとした気分になった。彼に近づき手を差し出した。倒れたままシャムスは手を伸ばし2人は握手を交わした。

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