ミーマルシナンはアヤソフィアよりも大きいモスクをつくりたかった? オスマン帝国外伝シーズン3 78話ハイライト

 マトラークチュがある建築現場をあとずれた。机の上にはモスクの設計図が置かれていた。どうやら青空の下で設計がなされているようだ。

マトラークチュは興味深そうにその図面を見ていた。少し年を取ったがマトラークチュも数学や絵画に卓越した歴史家だった。だからモスクの設計図にみ人一倍関心があるのだ。しばらくすると中から髭のはやし、腰には建築用の道具をぶら下げた男が出てきた。 彼は出てくるなりマトラークチュをみると

「16メートルですね?」と話しかけた。 さすが将来大建築家になる運命の者が語る挨拶はちょっと違う。 マトラークチュも気が付き

「10、9、 と数えながら、シナン何を見つけようとしているのだ。何を計算しているのだ?」

と挨拶を返した。当時の科学者は(今の科学者も一部そうだけど)三度の飯より科学の話が好きだった。マトラークチュも例外ではない。(残念ながらドラマでは最近はリュステムとの確執の場面でよく出てくる。本来はもっと違った生活を送っていたに違いなし)

「きかないでください、ナスフエフェンディ 私は長い間アヤソフィアを夢見ているのですよ。一日中 この(長さや幅や奥行きなどの)寸法とその割合を計算はすべてそのためですよ。夜も昼もずっとね。彼らに安らかの眠りを!イシドロスとアンテミオスは偉大な学者だったのですよ。

わあなんとシナンはあのアヤソフィアに魅了されていたんだ。シナンはそれを造った建築家を讃えた。
そういうとマトラークチュも楽しそうな表情をした。

「その通りだな。1000年も前に世界で最も大きな教会を彼らは造ったのだからな。今はそれが世界で最も大きいモスクだからな」

と当時アヤソフィアはモスクとして使われていた。メフメト2世によってコンスタンチノープルが陥落したのち、そこはモスクとなったのだ。そしてアタテュルクの時代、90年前に博物館として、人々に親しまれてきた。1985年にユネスコの世界遺産にも登録されたのだが、1か月前の2020年7月アヤソフィアは再びモスクとなった。

 

 話をマトラークチュとシナンに戻そう。

「スペインのカーフィルたちさえより大きいものを建てたのですよ。勿論モスクではないですが。教会としてですがね、ナスフエフェンディ 」

「サンタマリア教会かあ!確か10年前ごろ造られたのだよな。お前のもくてきはなんだ?もしかしたらもっと大きなモスクを建てたいのか 」

と聞くと、

「思い浮かびましたが、とても難しいですよ、ナスフエフェンディ!とても難しい・・・」

と言いながらも、夢見るシナンはいとおしそうにアヤソフィアの設計図を見つめた。 するとマトラークチュが

「今お前は小さいのから始めよ。それからより大きいのを建てるればいいのだよ。アヴラト市場に複合施設が作られることを聞いたかい? 」


「きかないことがありますか!もちろん知ってます。ミーマルパシャ(造営局長)が私に設計をまかせたのですから」と答えた。

「ならばなぜ出来上がらなかったのか? 」とマトラークチュは尋ねた。

「彼らが悪いのではなりません。私の設計の数値は私以外にはわかりませんから。時々私もわからないのですよ」

と言って笑った。そして「実は総合的に・・・」とまた説明し始めると、

「待て、なぜわたしにせつめいするんだ?これからはその複合施設はあなたに預けられたのだよ。あなたが建築を管理するんだよ」というと、

「馬鹿なことを言わないでください、ナスフエフェンディ。私のことを知らないのに、この複合施設の建築を誰が私に任せるというのですか」 

と答えた。マトラークチュがからかったと思ったのだ。するとマトラークチュは真顔で

「スルタンスレイマンハンハズレトレリ」 というのを聞いてシナンは唖然とした。 それからマトラークチュは座り、シナンのさまざまな研究を聞いたあと、

「ここにこんな素晴らしいものがあるとは知らなかったよ」とマトイラークチュは感嘆した。 するとシナンは

「そんなことはありません、ナスフエフェンディ、あなたのも諸書物もあそこにありますよ。大おかげさまで多くのことを学びました」と言ってトラークチュの本を指さした。 そして

「ところでアヴラト市場にはいつ行くのですか?まずは造営局長と話さなければなりません。それに今の私の仕事はすべてここにあるのですよ。ここをどうすればよいのですか?ときくと

「マトラークチュは建築のトップ(造営局長)はあなたなのだからな。皇帝は毎日我々に建設状況を聞くのだよ。できるだけ早く完成させなければならないのだ」というと

「ナスフエフェンディ、申し訳ございません、妙なことをおっしゃいましたね。少し前造営局長とおしゃいましたか、其れとも聞き間違えましたか?

と聞くと、 マトラークチュは微笑んで付き人に合図した。

「ルトフィパシャが推薦したら皇帝が承諾したのだ。そして任命書を渡しながら

「あなたに造営局長が命じられました。おめでとう」

と言った。するとシナンは

「それならすぐ働き始めなければなりません。 私の設計図をどこに置いたかは神のみぞ知るです。さあ早く、早き行きましょう」と言って、飛ぶようにアヴラト市場へ向かった。

これがスレイマニエ・モスク セレミエ・モスク等多くの傑作を造ったミーマルシナンが始めて作る複合施設の始まりだった。

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