ハティジェとスレイマンがついに和解する! オスマン帝国外伝シーズン3 90話ハイライト
スレイマンがむずかしい顔で本を読んでいるとハティジェが入ってきた。
ハティジェはスレイマンを気遣いながら、
「ジハンギルに会いに来たのです。あなたにもお会いしたかったのです。ですがもしおじゃまならば・・・」と言うと、「フーン」と言って「きてすわりなさい」とスレイマンは答えた。
「もっと早くおうかがいしたかったのですが、勇気が出ませんでした。あなたの痛みをよくわかりますわ、皇帝様。私も経験しましたから、自分の命よりも愛するものを失う痛みはよくわかりますわ。あなたの心におちた火が、ろうそくのようにあなたの心の中をやきこがすのですから、大海の水でさえその火をけすことはできませんもの。どんなものでも消すことはできません。それにその源は息なのです。息をするたびごとに火は燃え続け、しまいには焼き焦がすのです。そして灰となる・・・そうです、あなたの中にある素晴らしいものを皆破壊してします」
というと、スレイマンは耐えきれなくなってたちあがり
「サライへ戻りなさい、ハティジェ(Hatice)」といった。スレイマンはハティジェがイブラヒムのことを言っているのが分かったからつらくなったのだ。
ハティジェはたちあがりながら
「おにいさま(アービabi)」とよんだ。彼女が彼を兄(アービ)と呼ぶのは久しぶりのことだ。それからハティジェは
「以前あなたは私を私のハティジェ(ハティジェム、Hticem)、私のたからもの (ベニム クユメティム、benim kıymetim)と呼んでくださっていたわ。以前のようにはもう決してもどれないことはわかっています。でももう十分ですわ。私は大切な人を失いました。あなたも大切な人を失ったの。冬は終わりにしましょう。私はもう一度あなたの妹になりたいのです。私をあなたの天国に入れてください。あなたに愛してもらいたいのです」
と言ってうつむいた。これはハティジェの心からの告白だった。スレイマンにハティジェの思いはようやく通じた。スレイマンははハティジェの頬をやさしくなぜた。ハティジェもスレイマンの手に甲に口づけした。(これは敬意を示すしぐさです)
そして「これからはずっとあなたのおそばにいますわ。決してあなたを一人にしませんわ」とハティジェは言い、二人は抱き合った。こうしてようやく二人は和解し、やすらかな空気に包まれた。
おもえば夫のイブラヒムの命を兄スレイマンに 奪われてからずっとハティジェはスレイマンを憎んできた。ヒュッレムにたたかれ森に捨てられ、ようやくサライに傷だらけで戻ってきたときも、スレイマンはハティジェを信じなかった。その時ハティジェのスレイマンへの信頼は完璧に失せたのだ。
そしてシーンは変わってハティジェは次の日シャーを訪れた。シャーと昨晩ある予定があったらしい。それでシャーは心配して「どこにいたの」と聞いた。ハティジェは久しぶりに晴れやかな顔で昨晩スレイマン兄と話したことを伝えた。
「兄のとこにいました。陽が昇るまでおはなししましたわ。 もう一度妹になりたいといって手に口づけしたのです。背中の重荷がいっぺんに消え、はじめて安らかにめがさめたわ」
するとシャーは「どうしたの突然?」と聞いた。それはそうだ。私たちもシャーと同じ質問をしたくなる。あんなに憎んでいたのに・・・
ハティジェは
「彼はとても苦しんでいますわ。日に日に弱っていき、立つのも辛そうですわ。二人とも十分悲しんだもの。そして私たちは死んだわ。今はもう一度灰から生まれ変わる時なのよ。私たちは兄弟姉妹よ。同じ母から生まれたの。同じ父の子供だわ。あなたもそうです。ベイハンもそしてファトマ、私たちは家族なのです。いままで何が起こったとしても、この真実は変わらないわ。」
「とうとう、わかったのねハティジェ。私は何年もの間ずっとこのことを言ってきたわ。私たちは家族よ。誰も私たちの間には入れないわ。入ってはいけないの。何があっても血は水よりも濃いのよ(Et tırnaktan ayrılmaz)」とシャーも嬉しそうに答え、ハティジェに抱きついた。
セリム1世とアイシェハフサヴァーリデの子供たちはこうしてまた一つになった。だがこの喜びは長くは続かなかった。
少しトルコ語
トルコ語で名前の後にmをつけると私のという意味になりますが、これは親しみを込めてより関係が深い気持ちを表します。
スレイマンはハティジェムと言っていたのですが、次第にハティジェになり、このシーンまではmをつけてよんでいませんでした。