ジハンギルが
「なぜ母は何故こないの」
とスレイマンに聞く。まだ小さいのに母親と離れ離れに暮らすのはかわいそうだ。でもスレイマンはジハンギルを見てもヒュッレムを許そうとはしなかった。
いまヒュッレムは左遷されエディルネにいる。
彼女にできることはスレイマンへの思いを手紙に託して書くことだけだった。
「至高なるパーディシャーさま
私の世界よ
私の息、
私の朝
私の夜私の流れる血よ
私の天国
私の春、
私の幸せよ
この宮殿はサライではなくお墓のようです。
私には見える目がないので見えません。
私には聴く耳がないので聞こえません。
私には話す舌がないので話せません。
この空っぽな部屋に住む代わりに、あなたのそばで鎖につながれて暮らしたほうがましです。
貴方の青い瞳をもう一度だけ見るために、私のすべてを捧げますわ。
あなたの息なしではなれてくらすことは、あなたをこよなくあいする者にとってはとても惨めな罰です。
ですが判決を下したのがあなたなのですから、私はすべてをうけいれていることをお知りください。
貴方の御慈悲におすがりいたします。
私の過ちのためにどうか私を忘れないでください。
貴方の高貴な心からどうか私を放り出さないでください」
とヒュッレムは心のうちを綴った。
彼女は本当にスレイマンが好きなのだ。(どこがいいのかなあとか時々思っちゃうけど)
彼女はその手紙をスレイマンに送った。でも返事は来なかった。
何と手紙はメルジャンに届けられ、そしてメルジャンはシャーに渡し、シャーはその手紙を破り捨てたのだった。
シャーは何故手紙を棄てたのだろう?
もし手紙をスレイマンが読めば、彼が心変わりすると思ったからだろうか?
それにしても手紙まで破るなんて最悪!(前にもお話しましたが、実際のシャー様は人の手紙を富むようなことはしません。勿論破ることも・・・)