ムスタファの死 オスマン帝国外伝シーズン4 50話ハイライト
とても悲惨で悲しい事件は今から467年前の1553年10月6日に起こった・・・
場所はは今夜平原のエレーリでのことだった。スレイマンの天幕の前に来たムスタファは刀を兵士に渡し、中に入っていった。
ムスタファは初めてイスタンブルにき来る途中の馬車の中で若きマヒデブランと話している姿を思い出していた。彼らはスレイマンが即位したためマニサからやってきたのだった。
その時「あとどのくらい行くのですか、休んで遊びましょう」と無邪気なムスタファは元気にマヒデブランに言っていた。
「もうすぐヨ、風がはこんでくれるわ」とマヒデブランがいうと
「父上に会いたいです。イブラヒム伯父さんは待っていますか?」とムスタファが尋ねた。
「待っているわ、 御父上に、おばあさまのハフサ様、ハティジェおばさまみんなが私たちを待っていてくれるわ」
とマヒデブランが答えた。
ムスタファはそのことを思い出しながら天幕の中に入っていった。
スレイマンは後ろを向いていた。
外では近衛兵がテントの入り口をふさいだ。イェニチェリと対峙する方になった。リュステムも遠くから見ていた。ヤフヤたちはもちろんそばにいない。彼らは少し離れたところにいた。一緒に来たアトマジャは馬に乗ってヤフヤに知らせに出かけたのでテントの前にはいなかった。
ムスタファはフレイマンに3メートルのところまで近づいた。そして「皇帝様」と声をかけるとスレイマンが振り向いた。スレイマンはムスタファをにらみつけながら
「私に反逆したな。 あなたは私を裏切ったのだな」といい、椅子に座った。
ムスタファは「皇帝様」というとカーテンの後ろから処刑人が現れた。史実では3人の処刑人いわれているが、ドラマではもっと数が多かった。大勢でムスタファを取り押さえ、首に縄をかけた。ムスタファは必死で抵抗した。するとスレイマンは「早くせよ」と叫んだ。
スレイマンはずっとムスタファが苦しむ様子を見ていた。
ムスタファは「父上、父上」と叫びながら、首の縄をふりほどき、テントの入り口にはしっていった。
それをタックルして捕まえたのがリュステムの忠臣のマフムードだった。マフムードにつかまったムスタファに、数人の処刑人が駆け寄ってもう一度首に縄をかけ、締め付けた。
それを見届けたスレイマンは
「去れ」と処刑人たちに叫んだ。
テントの中には 二人が残された。
スレイマンはくびにまかれたひもをほどきムスタファを抱いた。そして見つめた。するとムスタファが小さい頃のムスタファに見えてきた。ちいさなムスタファに何度も「ムスタファ、ムスタファ」と叫んだ。よべば戻ってくるとでも思っているかのように・・・
勿論スレイマンは聡明で勇敢でやさしいわが子ムスタファを殺めたくなかった。でも彼はムスタファとムスタファを愛する人々を恐れていた。彼らによって皇帝の座を退かされるかもしれないという強い恐れを抱いていたのだ。
そうなのだ、かつて自分の父セリム1世が、祖父のバヤジト2世を退位させた。その記憶がスレイマンを悩ませ、ついに殺めてしまったのだった。
こうしてスレイマンは玉座を守った。だがスレイマンの失ったものも大きかった。スレイマンは心の安らぎとしあわせを同時に失ったのだった。こののちスレイマンはわらうことも喜ぶこともできなくなってしまった。彼は後悔して生き続けた・・・
あれほど多くの偉業を成し遂げたスレイマンだったが、それをもってしても、息子殺しの汚名を晴らすことはできないのかもしれない。