晴天を衝け 4話 泣く子と地頭には勝てない
栄一の家はその地方でも2番目に裕福な家だった。裕福なのは良いことばかりではなかった。御用金と言う名目で年貢とは別に収入に応じて一時金として特別に役所に支払わされるのだ。
父の代わりで祖役所に出かけた栄一は500両の金を要求された。
500両を稼ぐには大変なことだ。でもそれを簡単に取り立てる役所に怒ったのだ。父に話しを伝えますといい、即答しようとはしなかった。するとお侍は怒って刀を抜く真似をした。刀でおどかすのだ。なんともひどい話だった。
「承知した」と頭を下げよという役人の言葉に反抗したが、隣にいたおじいちゃんに無理やり頭を下げさせられた。
そのことを家に帰って父親に話すと、父は
泣く子と地頭には勝てない。明日すぐにはらって来いと言ったのだった。
次の日は大雨だった。でも栄一は500両持って出かけた。そして無事納品し 、そして雨の中土の上で土下座した。
しばらく頭を下げていた栄一だったが、心に思うことを言い始めた。だがそっと顔を上げるとっそこには役人はもういなかった。
この時の経験が栄一の将来に強く影響したことは間違いない。彼は生まれて初めてどうしようもならない屈辱を知った。そして権力者という害をまき散らす存在を身近に感じたのだった。
ところで泣く子と地頭には勝てないとはどういうことだろう?
”泣く子と地頭には勝てぬとは、道理の通じない者や権力者にはどうやっても勝てないから、無理を言われても従うしかないということ”(引用ことわざ辞典より)
だそうで、なにもわからない赤ん坊(泣く子)や平安・鎌倉時代に荘園を管理し、税金を取り立てていた役人だった地頭とは、いくら争っても無駄だと伝えているようだ。
地頭とは権力をもち、横暴だった。
(いつの時代もほとんど同じなのです。権力者が権力者以外の人々を抑圧する構図は悲しいことに昔からまったく変わらないのですね。むなしいですね。権力者のいない世界でみんなが仲良く暮らす世界があるといいですね)