【トルコ小説】「心の園にてメヴラーナ」その11 博物館、墓、そしてメヴレヴイーについての知識2


 (忠俊とガイドの話の続きからです)

ありがとうございました。あなたを疲れさせてしまわなかったでしょうか。そうでないことを願いますが、あなたの教えてくださったことは、私にとって、とても大切なことです。そこで、もうひとつお尋ねしてもよろしいでしょうか」

「もちろんです。疲れてなんかいませんよ。反対に、聖メヴラーナについて語ることは、私には大きな喜びとなります。お聞きになりたいことがあったら、何でもお 尋ねください。私の知っていることは、何でもお答えします。あなたに、よりはっきりとした考えをもっていただきたいですから。どうか、質問なさってくださ い」

「わかりました。それでは、儀式でみたセマーゼンたちは、メヴレヴィーなのでしょうか、彼らは心の絆で繋がっているのでしょうか。彼らは我を忘れて旋回しているように見えました」

「あなたがご覧になったセマーゼンたちとシェイフは、過去を再現させるために、政府のスタッフの一員として働いている方々です。精神的生活について、私たちに はわかりません。この絆は、個人的な特別の絆と考えられます。ただ自分の心の中だけ、創造主との間に見られる想念です。強い心の結びつきです。セマーゼン は、この絆を得られたかもしれないし、そうではないかもしれません。しかし、情熱溢れる愛の状態に入っているのですから、メヴレヴィーではなく、その心の 絆が得られなかったとは、到底考えられません」

「ええ、そうですね。私も、彼らがその絆で結びついていないとは考えられません。きっと、絆を得られたことでしょう。それではスルターン・ヴェレドの時代のメヴレヴィーたちがどのようであったか、さらにお話していただけませんか」

「メヴレヴィーのタリーカのきまりでは、試練に耐え、試験や試みを乗り越え、能力ある指導者から許しを得た者にその資格が与えられます。メヴレヴィーになるた めには、指導者から許しを得て、免許皆伝を授かることが必要です。メヴレヴィーとしてのふるまいや着こなし、携帯するものから話し方まで、さらに周囲の人 々への関心、他の人々に対するよい態度など、タリーカのきまりには、明確に枠組みがしっかりと示されています。メヴレヴィーに対して、愛情と関心を持ち、 シェイフの存在するテッケ(修行場)で、必要なら儀式に参加する者をメヴレヴィー・ムフビーといいます。メヴレヴィーを愛する者という意味です」

「それらの儀式、それに免許を授ける指導者やシェイフは、今尚存在していますか」

「忠俊さん、この私のした話はスルターン・ヴェレドの時代のことです。いつまで続いたのかはよく存知ません。私が申し上げたように、今日まで伝統として続いて きたかどうかもわかりません。インシャアッラー、いつかコンヤに一緒に訪ねましょう。そして、聖メヴラーナの子孫であるチェレビーたちを探して、彼らから お話を聞きましょう。私もこのことを、非常に知りたいと思っていますので」

「インシャアッラー、とはどう意味ですか」

「アッラーがお望みならば、という意味です」

「わかりました。ありがとうございました。どうかお続けください」

「メヴレヴィー・ムフビーのところでしたね」

「そうでした、メヴレヴィーの修道場のシェイフをチェレビーといいます。聖メヴラーナ・ジェラーレッディーンの子孫から選ばれた方々です。コンヤに存在するメ ヴラーナの修行場のシェイフたちは、みなチェレビーと呼ばれています。タリーカに結びついた弟子(まなびと)たちやデデ(千一日の修行を修了した者の称 号)たち、修行者たちから絶大の愛と尊敬を得ています。チェレビーたちは、別名モッラ・ヒュンカール・オウルラルとも呼ばれます。メヴレヴィーになりたい と望む者達は、修行場に入ったあと、必要な儀式を一通り行い、確実にきまりを守ることが、その慣わしとなっています。一部の者たちは、メヴレヴィーという 名前を得るために、千一日間の試練に耐える必要があります。試練はメヴレヴィーの伝統に従えば、ある小房で独居し行われます。試練を受ける弟子たちは、修 行者という意味のチレニスィンと呼ばれます。修行は、内的世界における特別な訓練であり、自我を鍛えるためのひとつの方法です。修行は儀式によって始ま り、儀式によって終わります。

 メヴレヴィーの候補者たちを命という意味のジャンと呼びます。ジャンは三日間の最初の修行の後、小房のひとつに身を置きます」

「偶然ですね。日本でも愛するものたちへ「わが命」などと呼びかけます」

「そうですか、忠俊さん。このように似ているのは、適切な言葉だからでしょう」

「三日間の修行の終わったところまで、お話していましたね。さて・・・」

「そのとおりです」とガイドはいい、忠俊の中に芽生えた熱烈な興味と注意力に感嘆しながら、話を続けた。

「ここでは三日間、秘められたという意味のスルになります。どこへも出かけることはできず、扉も窓も閉まっています。食べ物と水を食事係が運びます。三日間の 修行が終わると、ジャンを連れ出し、デデのところまで連れていきます。ジャンはデデの前で正座し、授けられた教えと示された道について拝聴します。その 後、再び修行に戻ります。十八日間修行場に留まります。この間、外に出ることはならず、ただ修行場の中だけを歩き回ることが許されます。十八日後、シェム ス・テブリーズィー(シャムス・タブリーズィー)を訪れるために出かけます。訪問後、チェレビーたちが日課とする、神を讃える言葉やドゥアー(神への祈 り)やズィクルの言葉などを学びます。これを学習した後、望むなら修行を続けます。また望むならその先にある「メヴレヴィーの館」に入り、一定期間奉仕活 動をし、終了となります。「栄誉ある台所」という意味のマトバフ・シェリフで合計千一日奉仕します。この千一日間の中で、いろいろな仕事が与えられます。 これらの仕事についてお知りになりたいですか」

「はい、教えてください」

「1、 足へ奉仕する。(アヤクチュ)
2、中庭を掃除する(スプルゲジ)
3、台所のろうそく台に火をともす。(チュラウジュ)
4、修行場のろうそくをつける(カン ディルジュ)
5、食事の準備と片づけをする。(ソマゥチュ)
6、修行場の中央間で仕事をする。シェイフの敷物をセマーハーネに敷き、返礼の後片付ける。 (メユダンジュ)
7、デデたちの珈琲の豆をひき準備する。(ラフミスチュ)この仕事は珈琲がアナトリアに広がった後に付け加えられた。
8、布団を敷き片付 ける。(ヤタクチュ)
9、市場で買い物をする。(パザルジュ)
10、食器を洗う。(ブラシュクチュ)
11、扉を管理する(ドラプチュ)
12、便所の掃除をする (アユルズジュ)
13、出でたちに甘い飲み物を配る。(シェルベトゥチュ)
14、修行者の衣服を洗う。(チャマシュルジュ)
15、タリクチ・デデの命令を 知らせる。(ドゥシャル・メイダンジュス)
16、台所のろうそくをつける(ウチュ・カンディルジュ)、靴を整える(パシュマクチュ)
18、食事をつくる。(ロクマジュ) 

修行場でそれぞれ重要なそして特徴のあるこれらの奉仕をするのは、千一日修行によって完成します。すべての奉仕活動の分野をこなした後、特別な儀式によって修行は終わります」
集中して聞いていた忠俊は、

「そして、メヴレヴィーの名を名乗る権利を得るのですね」といった。
ガイドは、「そうです、そのとおりです。修行が終わると、メヴレヴィーの名を名乗る栄誉を得ます」といいながら、忠俊に確認するように言った。

「この千一日の修行をこなし、さらにほかの儀式も行うために特別に作られた街や城があるはずですが」といった。忠俊は、その時代に戻り、そこで日々を過ごしたいと思った。

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