ファトマ皇女が宮殿を去る オスマン帝国外伝シーズン4 69話ハイライト
ファトマ皇女の侍女メレキが真実を語った。だがファトマ皇女はメレキのことを責めなかった。
それどころか「かわいそうに拷問を受うけたのね」と言ったのだ。彼女は侍女たちにはやさしかった。そういえば一度もメレキにつらくあたったところを見たことがない。皇女らしいふるまいの人だ。だがヒュッレムに関しては別だった。今回彼女を狙わせたのはファトマ皇女だった。
スレイマンはファトマ皇女を呼んだ。中に入るとメレキもいた。
ファトマ皇女は今まさにそのことをスレイマン兄に詰問されるのだ。でもなんと言い訳するのだろうか?
「この付き人が言ったことは本当か、ファトマ」ヒュッレムに対して反乱を起こすように扇動せよと命じたのか?」とスレイマンは聞いた。
「言い訳するつもりはありません。何を言ってもかわりませんから」とファトマ皇女は言った。
「もし関与していないのなら、言いなさい。彼女の言葉以外に証拠は何もないのだから」とスレイマン。
「私がしませんでしたと言えば、あなたをほっとさせることができるでしょう。でも私はそうするつもりはありません。あなたが愛したあなたの家族たちにあなたがしたように私も火へ投げ込みなさい」
というと、スレイマンはいらっとなって、そこにいた皆に「二人にしてくれ」といった。民阿が出ていくと、
「私は今まで無実の人々を誰も罰しなかった。今回のことにも証拠がある、ファトマ」と弁解した。するとファトマ皇女は
「ヒュッレムは悪魔ですよ。彼女に何が起ころうとも、それはすべてが彼女自身のせいです。今まで彼女を襲った悲惨な出来事は、彼女には少ないくらいの罰ですわ。それをつぐなうてみに地獄の住人がふさわしいわ」とヒュッレムについて厳しいことを言った。
「ヒュッレムは天使ではない、しっているよ。だが彼女には誰も持っていないものがあるのだ。忠誠心!完璧な忠誠心だ。ヒュッレムは今まで一度も私を裏切ったことがなかった。私を後ろからナイフで刺すようなことはなかった。私が皇位についている間、他の誰をも皇位につけようとはしなかった。
「ということはこれ(忠誠心のなさ)があなたの怒りの原因だったのですね。イブラヒム、ハティジェ、ムスタファ ジハンギル(・・・
故父セリム先皇帝がどのようになくなったかを覚えていますわ。彼の魂はどうやっても彼の体から抜け出ることができなかったのですよ。(トルコでは火とは死ぬとき肉体から魂が抜け出るとされている。罪の少ない人ほど魂が簡単に肉体から離れることができると信じられている。ファトマ皇女の話では、セリム元皇帝はとても苦しんだようですね)
「わが主は痛みでうめくことなく、彼の魂を召すことはなさらなかったのです。明らかにあなたの最期もおなじですよ」
「黙れ、ファトマ十分だ、だまるのだ」とスレイマン。
「黙らなければどうなさいますか?どうしますか?殺しますか?それならば躊躇なさらないでください。ムスタファを処刑したのですから、私など簡単でしょう!」
と言いかえすと、
スレイマンは
「出ていけ、二度と顔を見たくない。出ていけ。声もききたくない、出てけ」と激怒し怒鳴った。
ファトマ皇女はスレイマンをじっと見つめて
「悲しみと死で汚れた空気のこのクッベの下に私は長くとどまり過ぎましたわ」
と言って、部屋から出ていこうとした。
ファトマ皇女は出る前に最後に振り返ってもう一度スレイマンを見た。
こうして唯一残っていたスレイマンの妹であったファトマ皇女もついに皇帝の元を去った。
思い返してみれば最初にベイハン皇女、次にハティジェ皇女そしてシャーフーバン皇女がスレイマンの元から去った。ハティジェは死を選んだ。
今度は末娘のファトマ皇女だ。スレイマンの妹たちはみなスレイマンと仲たがいした状態でこの世を去った。
皇帝の座と引き換えにスレイマンは多くの者を失ったと思う。妹たちの幸せだけでなく、息子たちの将来も消えていったのだった。