ヒュッレム妃の最期 オスマン帝国外伝シーズン4 78話・79話ハイライト

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ヒュッレム妃の最期の望みは子供や孫たちを集め楽しく食事をすることだった。その夢はかなった。今子供や孫たとそして親しい人々が庭に集った。目の前のみんなはとても楽しそうだった。こんな光景はいつ以来だろう?というかヒュッレム妃は今まで一度も見たことがなかったのではないだろうか?
ヒュッレム妃はグリーンの衣装に髪飾りそしてグリーンの指輪をしていた。

ヒュッレム妃は一人一人の顔を見ながら最後に子供たちと話した時のことを思い出していた。

ミフリマーフには

「ミフリマーフ、決して忘れないで。これからののちはあなたが弟たちと皇帝を守るのよ。強くならなければいけませんよ」というとミフリマーフは何とも言えない表情でヒュッレムを見つめた。するとヒュッレム妃は急にやさしい顔をして、

「私の美しい天使よ。あなたは必要なものを身につけているわ」と語りかけた。
ミフリマーフも庭で母を見ながらそのことを思い出していた。

ミフリマーフの責任は重い。ヒュッレム妃にも難しいことだったのに、これからどうやって弟たち二人を守れるというのだろうか?
だがヒュッレム妃はミフリマーフにはそれができると信じていた。

次はセリムの番だ。彼には

「恐れをすてなさい。恐れは怒りと悪を呼ぶものよ。時が来たら勇敢になりなさい。あなたが望むものは唯一勇敢さで手に入れられるから」

といったのだ。

次にヒュッレムは万遍の笑みを浮かべてバヤジトを見た。

「慈悲の心をを持ち続けてね。でも決定は王のように下すのよ。生きつづけ、勝利を勝ち得るために、なさけぶかさに背を向けなければならない瞬間もあるわ。一番大切なことは生きていることよ。何があっても必ず生き残るのよ」と言った。

誰もが自分自身の死の色を持っているの。私の色は、深いエメレルドグリーン色なのよ。まわりが青で、炎の赤でおおわれているのよ。誰もが自分自身の天国を持っているわ。私のは、花々の緑が永遠に続く場所よ。
愛に満ち、愛の実でおおわれた庭なの。私はアレクサンドラ ラロッサよ、オスマンの宮殿に売られたルテニア出身の奴隷。ドニエプル川から黒海へ流された奴隷。母も父も妹も愛する者もなくした奴隷・・」

そこまでナレートしたヒュッレムは席から立ち上がってその場を去ろうとした。なんだか顔色が悪い。もう座っていることもできないのだった。ヒュッレムは

スレイマンに支えられてゆっくりと部屋へ戻っていく。その間にナレートが次のような聞こえてくる。

「いつも家族と会いたいと何度も神に祈ったわ。17歳で世の中の悲しみと残酷さを学び、一日で1000日生き、生きることをあきらめた、みじめなみよりのいないアレクサンドラなの。私はアレクサンドラよ。
悲しみを誰にも話さなかったわ、だれとも分かち合わなかったわ。
問題は深い井戸に投げ捨てたの。海へ流したの。波がそれらを消し去ったわ。
心を痛めるすべての出来事に大声で笑って答えたわ。
涙はただ家族のためにのみ流したわ。
奴隷の女の子が皇帝妃になり、私は運命にも負けなかった。そしていま、運命を変えた場所にいるのよ。スレイマンの宮殿に立っているのよ。
初めは壊したいと思っていたこの宮殿は今は私の家なの。家庭なの。復讐のために鼓動が止った心臓が愛のために新しく鼓動し始めなんてどうしてわたしにわかるでしょう?」
というところまで来ると、今度は皆が立ち上がって、ヒュッレムを見送ろうとしていた。彼女は軽く会釈をし、続けた。

「私はヒュッレムよ、スレイマン皇帝の奴隷。お気に入り、皇帝妃、5人の子供の母親、正式の妻ヒュッレム、私は愛も、同時に敵たちの敵意も得たわ。生き残りに命を懸けたわ。私は奴隷から頂点まで上ったわ。めらめらと燃える炎も通ったわ。
私が燃やし、私が消したのよ」
というところでみんなの目には届かないところまで歩いていき、宮殿の中に入った。

ヒュッレムは今にも倒れそうだった。女官たちの前で、ヒュッレムは倒れてスレイマンに寄りかかった。そしてスレイマンのめを見て「スレイマン」と言って気を失ったかのようだった。

でも最期の力を振り絞ってヒュッレムは歩き続けた。そしてついに倒れた。

皆が駆け寄り、ベッドに運んだ。

ヒュッレムは

「スレイマン、私は逝くわ。私の目を見て、私の手を握って」と言った。そして彼女の声でナレートが

「私は世界のすべての女性の魂なのです。私の存在は私の心の征服者の愛の中に隠れているのです」と流れた。次に

力のない声でヒュッレムは

「あなたは何ねんも前に私に詩を書いてくれたわね。それをききたいわ」と言った。

死ぬ間際に、愛する人の語る詩を聞きたいなんて、すてきだな。でも本当に死ぬ間際にそんな余裕があるのだろうか?

ともかくスレイマンは若き日に書いた詩を語り始めた。そしてその途中に彼女は・・・

その瞬間宮殿の時が止まった。スンビュルも動かない。女奴隷たちも動かない。

そして子守歌の一節が流れる。

庭ではセリムもヌールバーヌーもバヤジトもデフネもアイシェも動かなかった。

ミフリマーフもリュステムも動かなかった。

だがスレイマン皇帝の詩のナレートだけが続いてた。まるでの世のすべては止まり、詩だけがこの世に存在しているかのようだった。

それから彼女は目を閉じた。残念ながらヒュッレムは最後までスレイマンの詩を聞けなかったようだ。

スレイマンはヒュッレムと声をかけたが返事がなかった。それからかの女を抱き寄せ、抱きしめた。そして

「なぜならいつもあなたのことを話している。いつもあなたをほめたたえている。私の心は悲しみに満ち、私の目はいつもうるんでいる、私はあなたをただ愛する男なのだ。私は暗闇の中にいる」と詩の続きを語り続けた。

ついにあのヒュッレム妃の最期が来てしまいました。愛するスレイマンの腕の中で、愛の詩をささやかれながら彼女は逝きました。安らかな最期でよかったですね。きっとあの世に幸せに旅立つことができたことでしょう。

今までありがとう! ヒュッレム妃!

ここでふと思ったことなのですが、

マヒデブランはヒュッレムとは真逆に寂しい最期を遂げたのでしょうね。愛する人もそばにいないし、素敵な詩も聞けずに、ユスフとフィダンに見守られて息を引き取ったことでしょう。

でもマヒデブランにはスレイマンの愛の詩よりももっと強力な安らぎを彼女に与えることのできる言葉を知っていました。おそらく彼女はそれを唱えながら、心安らかになくなったことでしょう。

人はみな独りで生まれ独りで去っていきます。私もヒュッレム妃やマヒデブラン妃のように安らかにあの世へ逝けるといいなあと思います。

では良い夢を おやすみなさい。

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