新・オスマン帝国外伝~影に女帝キョセム~ シーズン2 E47 バヤジトを助けたカリカが死ぬ
皇帝が話しかけると木こりは顔を上げ皇帝を見た。
木こりはなんと死んだはずの兄オスマンだった。なぜ皇帝が彼と出会ったか?それはたぶん皇帝が自分の末路がオスマン兄と同じになるのではないかという恐怖心からだと思う。
皇帝は幼いときからずっとこの恐怖を拭い去ることができない。それはそうだろう。オスマン兄は皇帝だったにもかかわらず市中を惨めな姿で歩きまわされ嘲笑を受けた挙句殺されたのだから。その時ムラトは運悪く市中のある場所に隠れていた。そして そこからオスマン兄を実際に見てしまったのだ。その時の光景が彼の脳裏には焼き付いていた。
兄は無言だった。そして気を切り倒すと、小屋に向かった。どうやらそこで生活をしているらしい。 兄は昔のことを話始めた。当時二人がこんなことを話したことがある。
兄が「何か怖いのかい」と聞くとムラト弟は「いやなにも恐れていない」と答えた。すると「私は怖い。残虐者になるかもしれないと恐れている」と答えたのだった。
まさに今のムラト皇帝も掃除の兄と同じ気持ちだった。彼は粛清という名目で、残虐者になりつつある。慈悲の気持ちはほぼなくなっていることに自分で気づいていた。だからこそ今こうして兄の幻と対話しているのだ。
彼は自分が今していることが、自分の決定が正しいかどうかを自分自身に対して問い直していた。それがいろいろな妄想となって表れているのだ。
最期にムラト皇帝は自分のやり方を肯定した形で立ち直ったようだった。
ちょうどその時探していた部下たちに見つけられた。
抱きつく王女。でもムラトの世数は少しまだ変だった。
こうして発見されたムラト皇帝は宮殿に戻った。しかし子供を失った悲しみにはまだまだ打ち勝てていないようだった。今ままで彼は何人の子供を彼はてにかけてきたのだろう?
どんな理由であれ子供を失った親の気持ちは同じなのに、そのことを今まで全く彼は理解していなかった。
多分ファルヤ王女がおなかの子をなくしたときの気持ちも本当にはわかっていいなかったに違いない。
今皇帝は子をなくす親の気持ちを知った。そしてこれは今まで感じたどんな痛みよりも深く耐えがたいものであると知った。
今ようやくキョセムの痛みも理解した。キョセムはすでに二人の息子を亡くしている。
宮殿に戻った皇帝の元を弟カシムが訪れた。そしてカリカのことを伝えた。カリカはバヤジトの好意をもっている女性で、 バヤジトの母を救う時に手助けしてくれたのバヤジトの唯一の信頼できる味方だった。
そのことをカシムは皇帝に直々に話したのだ。皇帝は決心した。そしてバヤジトを伴いカリカの酒場を訪れた。バヤジトにカリカのことを思い出させた後、カリカを中に入れた。
バヤジトは狩りかとの関係を認めた。すると皇帝は剣を抜いた。バヤジトを斬るのか!と思ったが次の瞬間それをバヤジトに渡した。
そして、「この女性はアルコールを売るという大罪を犯したので、お前の手で成敗せよ」と言った。
なんとも悲惨な出来事だ!
バヤジトは愛する女性を自らの手で斬ったのだった・・・この時バヤ人の中には兄ムラト皇帝に対して初めて服従以外の感情がめばえた。