ヒュッレムの軌跡1 アレキサンドラの初登場の場面

 「食事だ、ならべ!」と船乗りが叫んだ。船の中の女性たちはみんな食べ物をもらった。ところが一人座っている女性がいた。

この方こそ後の皇帝妃になるアレキサンドラだった。

同郷の女性が

「アレキサンドラ、さあ立って食事しなさい。もう何日も食べていないでしょ。病気になってしまうわ」

といいながら優しく顔をなぜた。彼女の名はマルヤムとても性格の良い優しい人柄だ。今も友人のことを心配していた。マルヤムもアレキサンドラも共に売買を前提に奴隷としてこの船にのせられたのだ。

だがアレキサンドラは

「汚いオスマン人たちのスープを飲まないで!空腹で親でも私は絶対飲まないわ!」とトルコ語でかなり強硬な言葉を口にした。オスマン人たちがおこるのではないかと驚いたマルヤムはシーと黙るように口に手を当てた。他の者たちはロシア語をはなしていたが、どうやらアレキサンドラはトルコ語を知っているらしい。

やはり船乗りにわかってしまった。アレキサンドラはすぐに捕まえられるが、

「私に触ったら殺すわよ」と強気だった。

そういうのを聞くと、船乗りはピシャと彼女を叩き、彼女はその勢いで倒れた。倒れた場所の、その目の前にナイフがあった。彼女はそれを手にし、戦おうとしたがあっけなく捕まり、柱に縛られた。

マルヤムがなだめるが、彼女は

「私は死にたいの」と言った。

「すると船乗りは死ぬことは禁止だ、お前たちは皇帝の奴隷だからな」と叫んだ。

どうやらこの船は皇帝の住む都に向かっているようだ。

柱にくくられながら、アレキサンドラは夢を見ていた。教会婚で約者のレオと一緒にいる夢だった。そこに急にタタール人たちが侵入してきた。

目の前で母と父は刺され倒れた。そして彼女はさらわれた。

その時「人殺したち!」と声を上げた。その声に怒った船乗りは彼女に水をかけた。

それで彼女は目覚めた。だが彼女が今見ていたのは夢ではなく実際に起きたことだった。

アレキサンドラは両親をタタール人たちに殺され婚約者と妹と離れ離れになってしまったのだ。

そうこうしているうちに船はイスタンブルについた。

奴隷としてイスタンブルに連れてこられた女性たちはみな悲惨な過去を背負っていた。それにもめげず彼女たちは宮殿で皇帝の愛を得ようと必死に戦うのだ。ドラマはその様子が描かれている。

さてどんな皇帝の奪い合いが始まるのだろうか?そもそも皇帝は誰?

当時の皇帝はオスマン帝国皇帝10代めのスレイマン大帝だった。立法者とも称される偉大な皇帝の一人だ。アレキサンドラはどのように愛をつかむのだろうか?

その前にこれほど嫌っていたオスマン人たち(皇帝を含む)をどうして好きになったのだろうか?


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