イリヤスはメフメトを狙うが・・・ オスマン帝国外伝シーズン3 91話ハイライト
「狩りに出かけるように勧めてくれてよかったよ。全くサライから離れることができなかったからな」とメフメトは言った。
「政務でおいそがしかったですから。狩りをしながら、森の新鮮な空気を吸いましょう」とイリヤス(イルヤース)平然と言うが、実は彼の心は穏やかではなかった。何とかメフメトの命を取る機会をつくろうとしていたのだ。
いやあ、本当に人って怖いですね!イリヤスはマヒデブランから送られたスパイで、彼の使命はメフメトの命を奪うことだったのです。
そうとも知らずメフメトはイリヤスが自分のことを思って狩りへ誘ってくれたと思っていた。メフメトは根っから人がいい。誰の言うことでも素直に信じるという特性がある。人を疑うことは悲しいことだし時には自己嫌悪に陥ることもあるけれど、人を信じるときは慎重にならなければならない。当時ではなおさらだ。それは生き延びるために必須の項目だった。(とはいえメフメトのように人を信じて生きて、真実をしらないまま死んで行けたらそれも幸せなことなのかもしれません。)
メフメトはイリヤスに言った。
「あなたがいなければ私のことを考えてくれるものはいないよ」と・・・
「そうおっしゃらないでください。皇子様。皇帝様とミフリマーフ様はあなたを必死でおまもりしようとしています」というとメフメトは
「ああ、彼らがつらい時に彼らのそばにいられたらいいのに。特に皇帝様のね。ミフリマーフの話によると皇帝はもう長い間笑ったことがないそうだ。誰とも話さないそうだよ」
と悲しそうに言った。この時イスタンブルではハティジェの葬儀が行われていたのだった。さらにヒュッレムの行方は依然わからぬままだった。
イリヤスは「神が皇帝をお守りくださいますように」と言ってから小声で「皇子様、もしよろしかったら護衛兵から逃れて自由に散歩をしませんか?」とさそった。
来た来た!これはイリヤスがわなをしかけようとしているのだ。イリヤスは護衛兵をメフメトから引き離し、そこで一気にグサッとするつもりだった。メフメトはわかったという顔をした。
そして二人は逃げ出した。イリヤスが「おめでとうございます。護衛兵から逃げ出せましたね」というと「おまえは子供みたいだな、イリヤス。どこからこんなことが思いうかぶんだ? 」
とメフメトが聞いた。
「あなたは辛そうに見えました。少しでも元気になられたのならとてもうれしいです」というと、メフメトは
「ハティジェ叔母さまの死がとてもつらいのだ。なぜ自殺したのだろう、イリヤス?何か知っているか?」というと、
「いいえ、皇子様、前に試みたことがあるそうですが」と答えた。イリヤスが言ったのはイブラヒムが亡くなった時のことだ。彼女はその時も我を失いバルコニーから飛び降りようとした。
「だがそれはもうだいぶ前のことだよ。突然何が起こったのかまったくわからない」とメフメトはハティジェの死を悲しんでいたが、イリヤスは「彼女に神のご慈悲を」といいながら怪しげにあたりを見回し、メフメトの背後から襲い掛かろうとした。だがその瞬間メフメトは振り向き
「ムスタファ兄からも、私がサンジャクに赴任してから何も連絡がない。それから一度もあっていないのだ」
というと、イリヤスは急にメフメトが振り向いたので、彼は機会を失った。彼はドキドキする気持ちを見せずに「手紙をかきましたか?」と聞いた。
「彼は私にまるで私が過ちを犯したかのようにひどく怒っているのだよ。これは皇帝の命令だったのに。兄はこれに納得できなかったようだ。でも私に苦しみをぶつけるべきではなかったのだ」と言ってメフメトは前を向いた。
そこでイリヤスはメフメトをもう一度落とそうとした。その瞬間「かれらは皇子様」と運よく護衛兵が呼んだ。メフメトは
「わかった、あなたたちから逃れることはできないな。 さあイリヤス行こう、日が暮れないうちに狩りをしよう。でないと空腹のままになるぞ」と言った。イリヤスは残念そうな顔をしてメフメトの後ろ姿を見つめた。
ああ、よかった。何とかメフメトは助かったようだ。
アマスヤではマヒデブランとフィダンが話していた。
「私が自分で言って話したわ。誰も信じることができないから。必要なことはすべて伝えたわ。まもなくしらせが届くわ」とフィダンに言った。そうなのだ。マヒデブランはお忍びでアマスヤからマニサに出かけイリヤスに蛇を渡したことがある。
「簡単なことではありません、皇帝妃様。それにその死を疑われてはなりませんわ」というと、大きくため息をついてマヒデブランは
「イリヤスをとても信頼しているわ。必ず方法を見つけるわ。それまでまちましょう」 とマヒデブランは言った。
マヒデブランが放った刺客をムスタファはしらなかった。もし知っていたらムスタファは必ず止めたに違いないのだが、メフメトとムスタファはどうやら連絡を取り合っていないようだ。このまま二人は死ぬ前に会うことはできないのだろうか?