ニギャールは波止場までやってきた、腕には赤ちゃんを抱いている。リュステムたちも必死で何かを探していた。 陸路は封鎖され、残るは港だけだった。兵士がそのことを伝えると 「あらゆる場所をくまなく探せ。聞き込みを知ろ、必ず目撃者がいるはずだ。」とリュステムは命じた。 その時マトラークチュが市場で店の者と会話しているのが見えた。そこでリュステムは 「ナスフ・エフェンディ」と呼びかけ、マトラークチュがあいさつをすると、リュステムは 「皇女がさらわれた! 私の娘ヒューマシャーをさらったのだ。 「なぜそんなことを?」 「それはお前が答えろ!マトラークチュ! 私を嫌っている者の一人がお前だ!そうだろ!」と言いがかりをつけた。 そのころにニギャールは小舟を持つ漁師に話しかけていた。 「すぐに、向こう岸に行かねばなりません。後生だから私をあちらへ連れてってください」と頼んだ。 「いやだめだ、しごとがあるから」 と断るが、ニギャールは何度も頼むと赤ん坊がむずがった。ニギャールは 「エスマヌル、私の娘、泣かないで」とあやしながら、また漁師に頼んだ。 「子供が病気なの。すぐに行かなければならないの。 夫が待っているの」と言われて、その善良な漁師はニギャールを信じかわいそうだと思って、息子に連れて行ってあげるように言った。 やさしい漁師だ。ニギャールはどうやらその赤ん坊を自分の娘と思い込んでいるようだ。 娘は確か見つからなかったはずだが・・・ ところでリュステムとマトラークチュの話は続いていた。 「私は全く関係ない。どうやったらそんなことを思いつくというんだ」というがリュステムは怒りと不安でマトラークチュの言うことなど全く信じていないようだった。 だがマトラークチュは「まず知っていることは話さないと探せない」というようなことを冷静にいい返した。そこへマルコチョールがやってきた。そして 「とうとう誰が犯人かわかりました」と伝えた。すると 「誰だ?!自分の手で内臓をえぐり出してやる」 というとマルコチョールは 「ニギャールさんです」と答え、証拠のピアスを見せた。 「これを一人ですることは不可能だ。彼女は消えた。(行先を)誰も知らないのだ」 と困惑した様子でリュステムは言った。 すると、「私は知っている」とマトラークチュが言った。そして「このために戻ったのか・・・」独り言のようにつぶやいた。